フォト・エッセイ その5  
   
アロハボウルでアメリカを感じた Felt America at Aloha Bowl.  

 もう数年前になるが、クリスマス恒例のアロハボウルを見に行った時のことである。ゲーム前のセレモニーが始まった。グラウンドには陸軍、海軍、空軍、海兵隊の各制服を着た兵隊の先導で、アメリカ国旗がグラウンドに掲げられている。

 スタジアム正面のステージで、歌手が国歌を歌い始めた。観客は全員起立し、一緒に歌っている。右手を胸に当てている人も多い。電光掲示板に歌詞が出るので、何とか皆について歌うことにしている。ここまでは毎年同じで、歌手と国旗の大きさがその年々によって違う。

 この年は真珠湾攻撃50周年で、アロハボウルの開催される1週間前に、クリントン大統領がパールハーバーを訪れていた。この時使われた国旗がスタジアムでも使われ、例年になく大きかった。国歌の最後のフレーズが歌われセレモニーが終わったと誰もが思った瞬間、スタジアムの最上階すれすれと思われる超低空を、ヒッカム空軍基地を飛び立った4機の戦闘機の編隊が轟音と共に通過した。予想もしていなかったのと、余りに一瞬の出来事だったので写真を写すことも出来なかった。

 国歌の斉唱が終わる瞬間の時間に合わせて、上空を戦闘機が通過するタイミングは並み大抵の技術では出来ない。ピンポイントで目標を爆破する技にも等しい。スタジアムの観客はどよめいた。その後は大きな拍手に代わった。グラウンドでは国旗がたたまれ、運び出されようとしている。いつもだと国歌の斉唱の余韻に浸りながらこの光景を見ている筈であるが、この時ばかりは戦闘機の印象が余りにも大き過ぎた。

 

フィールド一杯の星条旗

始球式のサンタは空から来た

 

スタジアムの日差しは強烈

この日はダブルヘッダーで暗くなる頃には観客もばて気味

   

 アメリカという国はとんでもない国だと思った。アロハボウルはクリスマスの日に、ハワイで行われる全米カレッジフットボウルの公式戦である。日本で言えば六大学野球の人気ゲームと同じような物で、そこに戦闘機をマッハのタイミングで通過させたのだ。日本で自衛隊のブルーインパ ルスがゲームのセレモニーに参加したのは、東京オリンピックくらいではないだろうか。

 ハワイの経済は観光と軍事関係で成り立っており、軍の果たす役割の大きさを改めて感じさせられた。その後も毎年アロハボウルを観戦しているが、今のところ戦闘機が飛んだのはこの時だけである。

 

註:今はアロハボウルは名前を変えて行われている。

 

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