フォト・エッセイ その8  
   
ドッグラン Bark Park.  

  DH(ダイヤモンド・ヘッド)の麓を走るモンサラット・アベニューをDH側に向かうと、途中から通りの名前がDHロードに変わる。クレーターへ向かう入り口を過ぎてさらにこの道を直進すると、18番街の交差点から22番街の交差点までの間に金網で囲まれた広場がある。この広場の隣はDH記念公園墓地になっている。

この広場は犬専用の公園でバーク・パークと呼ばれ、バーク(bark)は吠えることを意味する言葉なので、名前からして犬の公園である。創刊百十一年を迎えたホノルル・マガジンでベスト・ドッグ・ランに選ばれた場所であることから分かるように、犬を放して運動させるには絶好の施設だ。

 道路から一段低くなった入り口には、出入りの際に中にいる犬が誤って外へ出ることを防ぐために金網の扉が二重に設置されている。また扉の鍵は犬には開けることの出来ない位置に付いている。周りに張り巡らされている金網も十分な高さで、犬が飛び越える心配はない。入り口を入るとすぐに公園の利用に関する注意書きが掲示されている。この横には、犬の糞を片付けるためのビニール袋とこれを捨てる蓋付きのごみ入れが設置されている。

 公園の利用規則には総て個人の責任で中に入るように書かれている。訴訟社会のアメリカでは、何か事故が発生した際に公園の設置者の責任が追求されるので、予めこのように書いておけば裁判で責任を免れることが出来るからだ。それ以外にも小さな子供を入場させないこと、入場させた場合はこれまた個人で責任を持って管理すること、犬のチューインガムや食べ物は犬同士の争いの元となるので持ち込み禁止などと書かれている。もちろん他の犬や人間に危害を及ぼす恐れのある犬はすぐに繋ぐこと、犬はIDを付けること、健康に問題のある犬の入場は出来ないなども書かれている。園内では犬が吠えないようにコントロールし、常に飼い主の視野に入れておくこと、これはハワイらしいが暑い日には過度の運動をさせないようにとまで書かれている。

 園内には水道もあり、空冷(舌を出して体温を下げている)だけでは追いつかない犬にとっては有難い。犬はお互いにじゃれあったり、何かを見付けて走り回ったり、飼い主に投げて貰ったフリスビーやボールを追ったりと自由に運動している。飼い主同士は世間話をし、犬ばかりでなく人間も公園の利用を楽しんでいる。日本語で会話をしているグループもいた。

夕方ともなると犬を連れた人が続々と集まって来る。車で犬を連れて来る人も少なくないが、残念ながら駐車場がほとんどない。歩道に乗り上げて駐車しているが、違法駐車として取り締まられると書かれている。

   
 

 

入り口の注意書きと糞を片付ける袋

観光客でも歓迎される

注意書き詳細

 

 

 

   

 犬を連れていなくても園内に入ることが出来る。好奇心の旺盛な犬や社交的な犬が、入り口の近くに挨拶にやって来る。子供の躾と同様に、アメリカの犬は日本に比べると格段に正しく躾られている。

 ハワイで犬と暮らしている人の生活を覗きたくなったら、バーク・パークを訪れてみよう。ペット・ショップを訪れる観光客には経験の出来ない世界が広がっている。犬を連れていなくても、犬も飼い主たちも温かく接してくれる。犬が好きという気持ちは言葉の壁を越えた世界共通のコミュニケーション手段だ。「座れ」、「待て」などの犬に対する命令に使用する言葉はそれぞれの国で異なっても、犬と挨拶をしたり接したりする時には日本語でも十分通じるような気がする。

 

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