フォト・エッセイ その4  
   
ライフガード Lifeguard on duty.  

  ハワイの主なビーチパークにはライフガードが配置され、海に来ている人の安全を確保している。インディアンオレンジ色の監視用ブース、浜に立て掛けられた救助用のロングボード、色の褪せた黄色のTシャツ、赤い水着が彼らのスタイルで、男女問わず同じ色使いだ。ライフガードが詰めているブースにはLifeguard on dutyと表示されている。

波が高くサーファーがたくさん出てはいるような時は、双眼鏡を握り締めて常に沖を監視しており緊張感がこちらにまで伝わって来る。一方波も穏やかで沖に出るサーファーも少ない時には、ライフガードもリラックスして沖からビーチに視線を移している時間が長い。トイレに行くような持ち場を離れる時は、必ずトランシーバーを持って行く。

 ライフガードの所にはおしゃべりをしに来る人、切り傷の手当てを受ける人、荷物の監視を頼む人などが訪れて、見ていると結構忙しそうだ。風で飛んで来た浮き輪を拾って、持ち主を探したりすることもある。

 先日、いつものアラ・モアナ・ビーチで本を読みながら日光浴をしていた時、近くのブースには若い男性のライフガードが詰めていた。急にライフガードが下を気にし始めたのでどうしたのだろうと見ていたら、家族が遊びに来たところだった。奥さんと男の子が二人、オムツをしている女の子が一人だった。ライフガードの車を止める場所は一般車両は駐車禁止だが、家族の車はここに止めても許されるようだ。

 男の子の一人は5歳前後でビーチに落ちている物を興味深く見つめ、時として拾い上げてはまた捨てている。もう一人の男の子は3歳くらいで、タオルケットの上でひたすら寝ている。ライフガードが女の子を抱き上げた。女の子は父親に甘えていたが、しばらくして母親と波打ち際に行った。今日のビーチは穏やかで、海に出ているサーファーもまばらだった。

ライフガードはしきりにTシャツのお腹の辺りを気にしている。ついにTシャツを脱ぎ、匂いを嗅いでからすぐ横にあるシャワーでTシャツを洗濯し始めた。洗い終わったTシャツは乾かすためにブースの縁に掛けられ、ライフガードは奥さんに向かって何か言った。抱きかかえた際に女の子の御漏らしが原因のようだった。

   
 

 

Lifeguard at

Lifeguard at

 

Ala Moana beach

Haleiwa Alii beach

Ala Moana beach

   

 ライフガードは奥さんから何か言われ、トランシーバーを片手に家族の乗って来た車から荷物を運んでいる。荷物を運びながら、上の男の子がウロウロしているのを見ている。ライフガードの顔からお父さんの顔になっている。

 ブースに戻ったライフガードは一通り海を見回すと、波打ち際の家族、辺りに落ちている物を求めて散策している長男、ひたすら眠っているブースの下にいる次男と順番に目線を移していた。波打ち際から戻って来た奥さんがサンドイッチをライフガードに差し出した。ライフガードはステップの途中で立ったまま半分に手でちぎって片方を奥さんに渡し、残りを食べ始めた。食べている時でも顔は海の方に向いている。長男が母親にサンドイッチをねだっている。母親は新しいサンドイッチを出して長男に渡した。

 トランシーバーで何か連絡があったようでライフガードは家族に声を掛けながら、まだ乾いていないTシャツを慌てて羽織り、トランシーバーを持って数十メートル離れた別のブースの方へ歩いて行った。

 ライフガードの家族サービスなのか、子供に父親の仕事を見せに来たのかは判らない。海が穏やかな独立記念日の頃、ライフガードの家族にささやかな楽しみがあってもいいと思う。

 

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